二月十五日は涅槃会。お釈迦さまが亡くなられた日であると信じられています。もっともお釈迦さまが亡くなられた日には諸説あり、ミャンマーやタイなどの南方仏教ではインド暦の二月の満月の日をお釈迦様の御命日(もっとも南方仏教では、お釈迦様の誕生、悟り日である成道会、そして命日である涅槃会は同じ月日であったと信じられています。)としています。インド暦の二月とは現在の太陽暦でいうと五月頃になりますが、実は日本の涅槃会が二月に行われているというのは、このインド暦の二月と混同したものですから、元来太陽暦の二月十五日とはお釈迦様の命日でもなんでもない日ということになります。また旧暦の二月十五日は現在の暦でいうと三月の中旬頃となり、仏教文化の発信地である京都や奈良等では花に囲まれた涅槃会を厳修していたのです。
しかし、私は現在の太陽暦の二月の涅槃会というものの、悪くは無いと思います。厳寒の二月あたかも生命の営みが休止しているような時節というものは、何か物悲しくて、お釈迦様の死を悼む法要にはふさわしい心持がするのです。
もっとも時節の善し悪しなどを言えば、お釈迦様には笑われ、臨済禅師には一喝されそうですが、開祖の命日という大切な日を、言わばそれぞれの国ごとの事情で変えてしまうというのは、仏教ならではの寛容さであると思います。あらゆる民族や文化に適応し、武力を伴わず世界宗教となった唯一の宗教である仏教の教えの根本はお釈迦様の慈悲の心に帰着します。涅槃会で、我々が接する涅槃図は様々なドラマを描写していますが、何よりも驚くのは登場する神々、様々な階層の人物、さらには動物達の数であります。これは言うまでも無く、お釈迦様の教えにすがるもの達が多種多様であることを教えているのですが、子供達がこの描写の中から、様々な方々に帰依されたお釈迦様の心の偉大さを感じ取ってもらえれば何よりかと存じます。
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