中国が唐と呼ばれた時代の禅僧に百丈禅師という方がいます。当時、教団としての体裁を為していなかった禅宗に大勢の僧侶が円滑に修行に取り組めるように、初めて禅宗独自の規律を導入した方として百丈禅師は知られています。
百丈禅師は老齢になっても庭仕事や畑仕事を欠かさない方でした。弟子たちは師匠の身体を案じ、肉体労働を控えるように薦めましたが、禅師はこれを聞き入れません。すると百丈禅師は「一日作さざれば、一日食らわず。」とおっしゃって食を断ってしまったと言います。
ここで注意しなくてはならないのは、百丈禅師が自らに対し、「一日作さざれば、一日食らわず。」という言葉を課していることです。
「働かざる者、食うべからず。」という言葉があります。原意は「働こうとしない者は、食べることもしてはならない。」だそうですが、何れにしても、何かしら大きな力による強要というニュアンスを感じざるを得ません。これに対し、百丈禅師は自らに自戒しているのが面白いところです。
幼稚園にもいろいろなルールがあります。もちろんルールは大勢の子供達が楽しく幼稚園生活を送る為に存在しています。例えば園庭でのおもちゃの片付けは皆で行う事になっていますが、何人かはお手伝いをせずに遊んでいる事があります。「皆がんばっているのだから、お手伝いして!」とは言いますが、本当のところは、後片付けをして、綺麗に整った園庭の様子に喜びを感じてもらうのが念願です。「ルールだからお手伝いしよう!」では無く、「お手伝い楽しいな!」そう思える子供になってもらいたいものです。
本当のところ、百丈さんも畑仕事や掃除が楽しくて仕方がなかったのだと私には思えますから…。
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