12月8日は成道会。お釈迦様がお悟りを開かれた日です。釈迦族の王子として生まれたお釈迦様はご本名をゴータマ・シッダルッダ、父王の名はスッドダ―ナ、母の名はマーヤと伝えられます。
お釈迦様の誕生後程なく、アシタ仙人という方が城を訪れ、シッダルタ王子と対面します。このアシタ仙人という方は、人の未来を予見できる能力をお持ちでありましたが、シッダルタ王子を見るなり急に泣き出しました。
王子の将来に何か不吉な事でもあるのかと詰め寄るスットダ―ナ王に対し、仙人は言いました。
「大王よ!王子は大変素晴らしい吉相を持っておいでです。貴方の後を取り王となられたならば、この全世界を統一する偉大な征服者となるでしょう。」
スッドダ―ナ王はこの話を聞いて大喜びで、続けて仙人が予見した王子のもう一つの未来等、耳には入りませんでした。
「大王よ!実は王子の未来にはもう一つの可能性があります。王位を捨てて修行者となれば必ずや仏陀となり、世の人々を苦しみから救うでしょう。私は老齢で何れにしても立派に成長した王子の姿を拝見する事が出来ないかと思うと我が身が不憫で泣いているのです。」
王子が王位を継ぎ、世界を統一する事に疑いの無い父王でしたが、王子が成長するに従い、その将来を案じるようになりました。何しろ王子は恐ろしいほどに優しいお子さんで、従兄弟が射た鳩を「この鳩は死んでいない。まだ生きている鳩の命と肉体は鳩のものだ。」と言って手当をしたり、捕食し合う自然界の生き物の姿に無常を感じたりという具合でした。この為、父王は王子が出家する事を恐れ、およそ王子の心に世を厭う感情が生じるような事物を王子の目前から隠してしまったと言います。
しかし、成人した王子を老病死の場から隔離する等という事は不可能で、ついに王子は29歳にして出家を遂げたのでした。この後六年間の艱難辛苦の修行の後、王子は悟りを開きブッダとなります。ブッダは悟れるもの、お釈迦様と通常お呼びするのは、釈迦牟尼仏(=釈迦族の聖者)を省略したものです。
釈迦様の出家の動機は、老病死に対する恐怖。しかし、これは誰もが恐れるものであり、不可避のものであります。誰もが体験するものに「何とかしよう」と挑んだのがお釈迦様の偉大なところ。悩めばこそ成長がある。悩む事が出来るのは素晴らしい素養だと思います。
天真爛漫な園児達ですが、成長するにおよんで様々な悩みを抱える事でしょう。お遊戯会や運動会に向けて行った努力や坐禅で体験した静かな心が、その悩みを超える為の胆となることを念願します。
|