2月15日は涅槃会、お釈迦様が80歳の生涯を閉じられた日であると、日本では信じられています。
涅槃という言葉は大海の波が静かになるが如く、あるいは煩悩の炎が吹き消されるが如く静かな境地となられることです。静かな境地であれば、35歳で成道されたときにお釈迦様はこの境地に達している筈なのでありますが、お釈迦様は心の平安を得られましたが肉体の苦痛を解決した訳では無い事が経典では説かれています。お釈迦様は心のスーパーマンでありますが、肉体的にはあくまで人間であり、苦痛を感じ病気にも罹られます。この肉体の痛みもすべて無くなったのが、完全な涅槃(無餘涅槃)という状態です。
お釈迦様は80歳になった時にマガダ国王舎城の霊鷲山から北へ向かって旅をされます。目的地は祇園精舎のあるコーサラ国とも、故郷であるカピラ城であるとも言われます。お釈迦様は毎年のようにこの行程を旅されていますので、通常の布教活動を粛々と行っていたと解釈して良いでしょう。ともかく四百キロ以上の道のりを80歳の老人が徒歩で、しかも裸足で旅をされたのです。涅槃経には途中、疲れ果てて動けなくなるお釈迦様の様子や腰の痛みを訴えるお釈迦様の姿が描かれています。およそ宗教の開祖の物語であれば、様々な奇跡に包まれた表現だらけである筈なのに南方仏教の経典は、あえてそれをしていません。これは、実にお釈迦様も肉体の苦痛から逃れる事は出来ない。生きている以上は苦しいのは当たり前、それをよく受け止めて、自らの「あるべきように」精進せよというのが仏教の教理の根幹であり、お釈迦様の苦労を描く事で、私達を励ましてくれているように私には思えます。
涅槃図にはたくさんの神々、人々、動物達が描写されています。お釈迦様が多く方々に慕われ、そして支えられていた事を涅槃図は教えてくれています。子供達が涅槃図に接し、お釈迦様の偉大さや、支え支えられる世の素晴らしさを感じてもらえればこれに勝る喜びはありません。
※東園寺の涅槃図は、塩竈神社の別当寺である法蓮寺に所蔵されたもので、塩竈出身で仙台藩四大画家の一人に数えられる小池曲江さんの作品です。参観日の際に本堂に荘厳します。是非ご高覧下さい。
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