不順な天候が続いていますが、それでも花木の萌や、日差しの明るさに確実に春を感じる今日この頃であります。保護者各位におかれましてはお子様のご卒園、ご進級に喜び多い日々をお過ごしの事と存じます。1年の保育活動を大過無く行えますのも保護者の方々のご理解とご協力の賜物かと存じます。誠に有難うございました。
さて、先日、東日本大震災より2年の歳月経過し、犠牲者の方々は3回忌を迎える事となりました。震災の当日、園児達と共に本堂で犠牲者の方々の為に延命十句観音経を唱え、その御霊の安らかなることを祈りました。本堂に入るといつも立派にしている園児が多いのではありますが、震災でお亡くなりになった方の為にお勤めをすると伝えると、園児達の表情がいつも以上に真剣なものとなりました。子供達にとってもあの震災というものが、如何に恐ろしい体験であったのかが分かります。そして、幼い心に命の尊さという自覚が自ずと生まれているように、私には感じられました。
あるとき宝島の地図を得た男は、友人を募って小舟で大海原へと漕ぎ出した。宝島に到着し、地図を頼りに宝の在り処にたどり着いた男は、仲間と共に宝を小舟に運び、意気揚々と舟を故国へと向かわせた。しかし、舟を出してしばらくすると暴風雨と高波に遭遇し、舟は木の葉の如く海を漂います。男は言いました。「舟が重すぎる。残念だが宝を海に捨てるのだ!」仲間は舟が沈んでは大変と、しぶしぶ宝を海に放り投げます。男たちは、命からがら舟は港へと着いたが宝はすべて失ってしまいました。ところが港に着くと男は高笑い!仲間達は暴風雨の恐怖と、折角得た宝を海に捨てたことで、男が正気を失したと思いました。しかし男は言います。「何を皆、悲しがっているのだ!宝などどうでも良いではないか!我々は1番大切な宝を無事に岸へと運んだのだ!」
大智度論という書物に登場するお話です。命が1番大切な宝。そんなことは誰もが知っている事です。しかし、私達はそんな当たり前の事を忘れたかのような行為を行ってしまうことが多々あります。園児の心に芽生えた生命尊重の心が大きく成長する事を心より念じます。
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