輪廻転生(りんねてんしょう)。生きものは生まれ変わる。お釈迦様が仏教を開いたインドでは生前の行いにより生きものは輪廻すると信じられています。そして、お釈迦様のような素晴らしい方は前世でとても良い事を積み重ねて来たと仏教徒は考えたようです。こんなことからお釈迦様の前世の物語がたくさん作られます。ジャータカと呼ばれるこの物語はある時にはお釈迦様が動物の身で主役として登場し他を救う様子が描かれ、日本の童話にも影響を与えているといわれます。次のシビ王の物語はジャータカの中でも特に有名です。
シビ王は大変優しい王様で家臣や人民の尊敬を集めていました。ある時、シビ王の城に一羽の鳩が鷹に追われて逃げ込んできます。シビ王はその鳩を助けますが、鷹は王に鳩を自分に返すように要求します。
「心優しき大王よ!鳩の命は救って私の命を救わぬのは何故ですか?私とて生きもの。私にはその温かい鳩の肉が必要なのです!」
鷹は王に対し、死んだ家畜などの肉では無く、まさに今の今まで生きていた動物の肉を要求するのです。シビ王はどうしても鳩の命を救いたくて、家臣に秤を持たせ、片方の秤に鳩を載せて、片方の秤になんと自分の太股の肉を削いで載せます。
「鷹よ!鳩の重さと同じだけ、私の温かい肉をあげよう!だから鳩を助けてやってくれ!」
しかし、僅かばかりの重さしかない鳩の筈なのに、王様の肉をいくら載せようとも秤は釣り合いません…。」自らの肉体を切り刻みながら、王様は秤の釣り合わぬ意味を悟りました。王の命も鳩の命もその重さには変わりが無いのです。王が自らその秤に身体を委ねたとき、やっと秤は釣り合ったといいます。
このシビ王こそが前世のお釈迦様。シビ王の行為は常人の目から見れば常軌を逸するもので、あまりにも極端です。とても子供には話せない…。しかしこの話、私達現代人には大きな示唆に富んでいます。私達の日常に、少しでも他の命を頂いているという自覚があるかという事でしょうか?食べ物を食べなければ誰も生きてはにけません。たくさんの命を頂戴して生存している私達。その犠牲となった命と共に生きていることに気付くべきでしょう。せめて食べ物は無駄にせずに。合掌、感謝して頂きたいものです。
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