昔々インドの山奥にキツネとサルとウサギが仲良く暮らしていました。その山に旅の老人がやって来ました。昔のことですから車や電車で旅をして来たわけではありません。旅人は峠を越えて隣国に向かうつもりでしたが、険しい山道を歩き通しでクタクタでした。山奥で大昔のことですから宿もありません。旅人は森で一番大きな木の下で一晩休むことにしました。
その疲れて横たわる老人を見てキツネとサルとウサギは話し合いました。
「おじいさんとても疲れているね。これで食べ物を手に入れるのはとても無理に違いない。僕達であのおじいさんを助けてあげよう!」
そういうとキツネは川へ魚獲りに、サルは美味しい木のみを探しにそれぞれ張り切って出掛けて行きました。ウサギはキツネとサルの提案に賛成したものの独り森に残され困っていました。ウサギがいつも美味しく食べている草はとてもおじいさんの口には合いそうもありません…。
困ったウサギでしたが自分はみんなよりジャンプすることが得意だと思い付き、おじいさんの前に飛び出し、精一杯ぴょんぴょん飛び跳ねて踊って見せました。突然、目の前にウサギが現れぴょんぴょん跳ねるものですから、疲れた旅人は驚きつつも喜んでくれています。ウサギは少し嬉しくなり、益々一所懸命踊りました。
そこにキツネとサルがそれぞれ魚と木の実を携えて戻って来ました。おじいさんの前で踊るウサギをキツネとサルは腹立たしくなりました。
「おい!ウサギくん!僕達が苦労して魚や木の実を手に入れて来たというのに、君はなんだ!呑気に踊りか!?」
そう言われると今まで調子良く踊っていたウサギは意気消沈。二人に申し訳ない気持ちと何も出来ない自分が恥ずかしい気持ちでいっぱいになりました。
そんな様子を見ておじいさんは言いました。
「キツネさんにサルさん。疲れた私の為にウサギさんは一所懸命にダンスをしてくれた。そのダンスはとても可愛らしくて私はとても気持ちが晴れやかになったんだよ。だからウサギさんを責めるのは止めて皆んな仲良くしておくれ。」
その言葉を聞いたキツネとサルとウサギは元通り仲良く暮らしたそうです。
これは6月29日の誕生会で園児に話したものです。園児達にはこのお話を通して小さな子供に出来るお手伝いや、お手伝いが出来なければ、家族の方々に「ありがとう」を言って家族の方々を元気付けようと提案しています。
このお話は本生経というお釈迦様の前世をテーマにした経典に由来するものです。原典の結末はウサギが焚き火の中に身を投じて自らが食べ物となって旅人の命を救うというもので、苛烈なまでの利他行(りたぎょう=他に恵みを与える行い。)を教えるものですが、園児にお話する内容では無いと判断し、前述の通り改変しております。
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