平成十八年二月発行
『 涅槃(ねはん) 』
涅槃とは「炎を吹き消した状態」を意味するニルバーナというサンスクリット語を音写した言葉であります。涅槃というとお釈迦様が亡くなったことをさす言葉と思われがちですが、お悟りにより心が穏やかに落ち着いた状態も涅槃というのです。ですから三十五歳で修行を完成された際に、お釈迦様はすでに涅槃に入っておられるのです。ところがいくら悟った仏様といっても、人間として避けがたい身体の苦痛から開放されることはありません。仏典をひも解くと、お釈迦様が病に苦しまれ、長旅に疲労困憊される様子が描写されていることに驚かされます。しかし、お釈迦様そんなときでも、乞われるままに法を説き、他を慰めておられるのです。
お釈迦様が亡くなられたという意味の涅槃は、後に「むよ無餘ねはん涅槃」と呼ばれます。余すところ無き涅槃という意味で、前述のような身体的な苦痛からも解放された完全な涅槃という意味です。
お釈迦様は齢八〇をもって多くの弟子たちや信者に囲まれて静かな最期をおむかえになりました。お釈迦様の最期の言葉は「みんな精進しなさい。きっと清らかなものになれるであろう。」の一言であったと伝えられます。