平成三十年十一月発行
「綱村公の業績から学ぶもの」
今年は近世塩竈の発展の基礎を築かれた四代仙台藩主伊達綱村公の三百年遠忌に当たり、各所で肯山公の遺徳顕彰の行事が開催されました。塩竈の位牌寺である東園寺では六月に法要を厳修、さらには塩竈市主催の顕彰行事、東北歴史博物館にて開催中の「伊達綱村展」にも資料出品や関連イベントの協力を行いました。
綱村公は神仏崇敬の念篤く、奥州一宮である塩竈神社に対する信仰から、これを支える塩竈の民に特令を下し格段の保護をされました。また肯山公の禅に対する傾倒は特筆すべきで藩主の立場にありながら、黄檗派や妙心寺派の禅僧に参禅し、ついには鳳山元瑞禅師から禅の免許皆伝である印可を受けている程です。
綱村公は上記のように精神修養に勤めるのみならず、神社仏閣の整備にも力を注ぎました。塩竈神社にあっては諸説あったその縁起を定めてこれに適うよう社殿を改め、自ら最も心を寄せた禅僧である鉄牛禅師を招き大年寺という黄檗派の大寺を開創するなど、綱村公に社寺に関する事業は、核となる精神性を中心において、その精神性を顕現する建物を建立するという特色があるように思われます。
綱村公は塩竈神社や大年寺だけではなく、平泉の天台寺院など数多くの社寺の普請を援助しており、これが藩の財政に悪影響を及ぼしたとも指摘されます。しかし現今文化財として維持される旧伊達藩内社寺の多くは綱村公の恩恵を賜っており、まさに百年の大経を見据えた公の業績は平和な現代にこそ、再評価されるべきだと信じます。