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法螺貝 住職の法話

平成十九年四月発行

『百花繚乱の春こそ・・・』

四月八日はご承知の通りお釈迦様の誕生日であります。もっともお釈迦様の誕生日には諸説あり、東南アジアの仏教国では五月中旬の満月の日をこれに当てますが、日本のような四季のある国に住むものにとっては百花繚乱の春こそが、やはりお釈迦様の誕生日に相応しいと感じます。

お釈迦様はカピラ城の皇子として誕生します。お釈迦様の母マーヤさまは長年子宝に恵まれずに苦しんでおりましたが、念願のご懐妊に嬉々として出産の為に帰郷したのだそうです。その道中のルンビニー園にてお釈迦様は誕生されました。経典の伝えるところによると、花盛りの無憂樹のあまりの美しさに一枝折ろうとしたときにお釈迦様は誕生され、直ぐに東西南北上下を見渡し片手は天を指差し片手は地を指差して「天にも地にもわれ独り尊し」とおっしゃったというのです。

このお釈迦様の伝説に対し雲門禅師という唐代の禅僧は「もしわしがそこにいたならば、その生意気な妖怪変化を棒で打ちのめし、犬のえさにしてやろう!」と乱暴なことを言っていますが、「仏教の開祖のお釈迦様!ありがたや!」などという感覚こそが悟りの邪魔者であるという禅の立場からすれば、生まれたての赤子がとことこ歩き難しいことを述べるなどということは、かえって釈迦の教えを誹謗することになるというのが雲門禅師の意図するところでしょう・・・。しかし、実際わが子の誕生に接すると、新生児室に並んでいるどの子供よりもわが子が元気に泣いているように感じ、どの子よりもわが子が輝いて見えるのが、実に人の親であり、人情ではないでしょうか?そう思うと、待ちに待った出産を終えたマーヤ様の目には、お釈迦様が雄雄しい獅子児の如く歩み、吼えるが如く声を上げたように見えても不思議ではありません。

花祭り(降誕会)とは単にお釈迦様の誕生を祝うのみにあらず。我々一人一人が自分自身の生命に対する感謝と慶びを確認するお祭りであると思うのです。

 
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