平成二十一年二月発行
『涅槃会』
二月十五日は涅槃会、お釈迦様の御命日とされる日です。東園寺では小池曲江筆の涅槃図を本堂に荘厳しお釈迦様の遺徳を偲びます。涅槃図の一般的な傾向として古い作品ほど登場人物が少ないと言われますが、江戸後期の作品である当山の涅槃図は、小池曲江さんが自らの技術を誇示するが如く、たくさんの神々や人々、さらには動物や昆虫などが描写されています。
涅槃図は他の仏画に見られるように、一応決まった形式というものがあります。「東西南北四組の沙羅双樹」「雲上のマーヤ夫人」「中央にひれ伏すスバッタ」涅槃経という経典に基づいた描写なのですが、この他にも必ず描かれる大切なものがあります。それはお釈迦様の御足に触れる老婆です。この方はお釈迦さまが悟りを開いたということを耳にし、その教えに触れるべくお釈迦様の後を追いますが、ついに聞法が叶わなかったという方です。実際にそういう女性が居たかどうかは不明ですが、仏法に触れることは最上の幸福であること、仏縁の有難さを表現しています。また、お釈迦さまがお亡くなりになられたのも、実に諸行無常を我々に教える為であったと言われます。