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法螺貝 住職の法話

平成二十三年五月発行

『不請の友』

「無師の智を以て無作(むさ)の妙用(みょうゆう)を発し、無縁の慈を以て不請(ふしょう)の勝友(しょうゆう)と作(な)る。」

碧巌録という書物の言葉です。「無師の智」とは誰に教わったものでも無い、人が元来有している智恵のこと。赤ちゃんのような純粋無垢なる心を言います。「無作の妙用」とは自分の損得や、社会的な価値などを超えた計らいの無いはたらきのこと。「無縁の慈を以て不請の勝友と作る」というのは自分に関連の無い人に対して、相手の依頼を受けなくとも友情を以て接するという意味です。  ちょっと難しい言葉ですが、この一節は慈悲のはたらきを非常によく網羅していますので、あえて紹介致しました。

 慈悲は、インドの言葉で最大の友情を意味するマイトレーヤと、世のうめき声を意味するカルナーを訳したものです。お釈迦様がこの他に対する思いやりの心を表す為に、家族や親族の愛情では無く、友情を用いたのは、家族を愛するのは当たり前で、選択肢のある他人に対して、あえて選択をせずに親愛をもって、その苦しみに接することに意義を持たせたのだと思います。

 震災以来、被災地には沢山のボランティアの方々がおいでになり、活動をされています。東園寺でも県外の寺院より、お見舞いやお手伝いを頂戴しています。この方々はまさに不請の勝友であろうかと存じます。本当に有り難いことです。私達被災者はこれに慣れてしまってはいけません。これを稀有なること、有り難いことと感じる心を持ち続けたいものです。また、機会を得て自分達がボランティアをさせて頂くときには、「無師の智」と「無作の妙用」を発揮致したいと思います。

 
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