雲居希膺禅師「龐居士作偈曰」
龐居士作偈曰
十方同聚會
箇々学無為
此是選佛場
心空及第歸
如是歸處
灞陵洞庭日本東
希膺(花押)
(訓読)
龐居士、偈を作して曰く
十方同聚會
箇々学無為
此れは是れ選佛場
心空及第して帰る
如是か帰する処
灞陵洞庭日本の東
(意味)
この馬祖禅師のもとに修行者は十方より集まり
おのおの無為の法を学んでいる
ここはまさに佛を選び出すところ
心を空ならしめ、選佛の試験に合格して、本源の郷へと帰るのだ。
さて、その帰するところとは
灞陵洞庭、さらには日本の東まで
(解説)
龐居士の境涯を馬祖禅師に示した有名な偈頌を記し、さらに杜畫障の詩の一節を用いて自らの境地を表現している。
杜畫障の「戯題王宰畫山水圖歌」に、次の一節がある。「巴陵洞庭日本東 赤岸水與銀河通」これは、王宰は遠景を描くに巧みで、巴陵の洞庭湖から遙か日本の東まですべて描き尽くしているとの意。雲居禅師の置き字は、「(自身が仏と悟れば)この巴陵から日本まですべての世界が本源の郷(=悟りの世界)であり、仏のはたらきが発露される場である。」の意。
雲居禅師は長安城の東の地名である「灞陵」と記しているが、龐居士が修行の為に資財を沈めた洞庭湖がある「巴陵」と音が同じなので通用したものであろう。ちなみに灞陵は秦の芷陽の地。漢の文帝を葬って後、灞陵という。