仙台藩四代藩主伊達綱村公自筆書状 三沢初子宛
本書状は、延宝七年伊達綱村公(一六五九~一七一九)二十一歳の時、ご生母三沢初子に送られたものです。
内容は、品川屋敷に蟄居する父君綱宗公が、四十歳の賀宴を設けてお祝いをしたとの母公の知らせに応えたものですが、以前より準備していた贈り物を実弟の石川主馬を使者として差し上げていただけに喜びが伝わります。
綱村公の母公宛書状は、夥しい数が胆沢郡前沢の三沢家に秘蔵されていましたが、近年散佚し目に触れるようになりました。
書状の終りに、裏林で鹿狩をした旨の記載がありますが、肯山公治家記録では、この日昼頃から夕刻迄、金剛沢、芦ノ口山で大規模な鹿猟が行われ、総人数二五八〇人が動員されたとあり、若い藩主の楽しみの一端が伺えます。なお、末尾の藤井の宛名は、母公側近の老女の名で、身分の高い人物への敬意から披露状の形式をとっています。
全体に両親への孝養の心と、弟妹への愛情が滲み出ている好箇の歴史資料といえます。