雲居希膺禅師 名号「南無薬師瑠璃光如来」
松島瑞巖寺中興開山雲居希膺禅師による薬師如来の名号。名号とは仏様の名前を記した書をいう。当山所蔵の雲居禅師の墨蹟には、この薬師如来の名号の他「南無観世音菩薩」「南無西方弥陀如来」の名号、更には禅宗の初祖と仰がれる「初祖菩提達磨」という祖号がある。
薬師如来は東方瑠璃光世界にあって、衆生の病苦を除き悟りへと導くことを本願としている如来である。本邦でも飛鳥時代より造像が盛んで、現世を尊重し現世の幸福を願う仏様である。(当山の不昧堂の本尊は薬師如来である。)
さてこの墨蹟は縦59センチ横16センチの小振りなもので、一文字目の南の部分に文字の欠落がある。昭和60年に発刊された雲居禅師の遺墨集に薬師如来だけを記した名号の例は無く、雲居禅師自身の信仰というよりは病気平癒祈願の為に請われて書されたものではなかと想像される。雲居禅師が開創あるいは復興に関わった寺は170以上にも上り、妙心寺派の中でも特筆すべきものがあるが、その事由は伊達家の物質的な援助もさることながら、この墨蹟に見られるような目前に苦しむ衆生に手を差し伸べた雲居禅師の大慈大悲のはたらきに帰するものであるといえよう。