雲居希膺禅師賛 谷坊栄海画「布袋画賛」
賛 雲居希膺禅師
画 谷坊栄海
咄箇自了漢
遭弥勒欺謾
拄杖頭布袋邊
兜率閻浮一様看
前花圃之蒭草膺子書于補陀岩畔把不住軒中
布袋は唐代に実在した契此(かいし)という禅僧がモデル。僧侶という立場ながら自由に盛り場を彷徨き、食べ物を手に入れるとニックネームの由来となっている布の袋にこれを入れ、空腹になるとこれを食べていたと言います。このような怪僧であったにも関わらず人望があり、次のような遺偈を作ったことから弥勒菩薩の化身と信じられるようになりました。
彌勒真彌勒 分身千百億 時時示時分 時人自不識
(訓読)弥勒は真の弥勒にして分身千百億なり 時時に時人に示すも時人は自ら識らず
作品は谷坊栄海という人の布袋図に雲居禅師が着賛したもの。雲居禅師の賛は若書きかと思われます。
「自了漢(じりょうのかん)」とは一人で悟ったような顔をしている輩という意味。この輩が弥勒に誑かされ、杖と布ぶくろを持って兜率天(とそつてん=弥勒菩薩が住む世界)と閻浮提(えんぶだい=人間世界、元はインドのこと)をごっちゃに見ているという内容。典型的な抑下(よくげ)の托上(たくじょう)、貶して実は褒めているという禅宗的な表現となっています。