小池曲江「渡唐天神画賛」
渡唐天神は菅原道真公が、宋に渡り径山の無準師範禅師に禅の教えを受けたという伝説に由来するものです。道真公の生没年は八四五〜九〇三年で平安時代の人、無準禅師の生没年は一一七七〜一二四九年で日本人僧侶としては東福寺開山聖一国師、瑞巌寺の前身である円福寺開山法身禅師が参禅しています。
つまり渡唐天神は時空を超えた存在であり、聖賢と神格化された菅公の名を借りて禅門の布教の為に作られたキャラクターであるとも言えます。
多くの渡唐天神同様、この絵の天神も手には梅枝を握り、中国風の服を着用しています。一般には無準禅師伝法のあかしに受け取ったという袈裟を入れた袋をさげている描写が多いのですが、曲江作の天神は袈裟を着けているのが特徴的です。また絵には曲江の筆による菅公御遺訓という文章が着けられています。