僧童猛虎互交肩
萬事無心一睡眠
人獣従来同佛性
修禅亀鑑在機前
把不住軒希膺(花押)
操毫於花園丈室
僧、童、猛虎、互いに肩を交う
萬事、無心、一睡眠
人と獣、従来、佛性は同じ
修禅の亀鑑、機前に在り
把不住軒希膺(花押)
花園丈室に於て操毫す
豊干寒山拾得そして虎が仲良く眠る画。四睡図と呼ばれる画題です。賛を付けたのは瑞巌寺中興開山雲居希膺禅師。「花園丈室」とありますので、禅師が妙心寺再住した正保2(1645)〜3(1646)年、64〜65歳の書であると思われます。絵師は落款から狩野尚信(1607〜1650)。尚信は探幽の弟で竹川町狩野家の祖です。尚信の作品だとすれば生年から38歳位の筆となります。
賛文に目を移すと転句の「人獣従来同佛性」が目をひきます。
「一切衆生悉有佛性」と言いながら、偈頌などではあからさまにそれを表現しないのが禅宗の詩偈表現の特色と思われますが、それをズバリ「人獣従来同佛性」と記しているのが、雲居禅師の偈頌の特色と言えるかもしれません。結句の亀鑑は手本や模範の意、機前は心のはたらきや一語を発する以前とう意味。僧侶(豊干)と行者(あんじゃ=寒山拾得)、そして獣が仲良く眠る様子はなんのはからいも無く無心であり、まさに機前です。