無著道忠禅師 「昔吾大覚金仙令於遺法弟子曰云々」
昔吾
大覚金仙令於遺法弟子曰凡在處百
由旬内講大乗経典須往聴之
亭子晃香律師應吾山禪師之請敷衍
円覚了義其経乃摩訶衍之極致而其地
僅歛一牛吼而蒙適守霊雲祖塔所
以不得交肩於塵揮之場洗耳於鋸
屑之辯矣
公及散筵製
玉偈属学徒同和之蒙謹依其韻寓
随喜兼購不往聴罪云
政々
舟駕暴流移両涯煩
君玄辯劈狂華講経已竟禪徒
去円覚妙心元我家
法山 無著道忠和南拝稿
江戸中期の妙心寺派を代表する禅僧、無著道忠禅師の書。内容は晃香律師が妙心寺学徒の為に円覚経を講義せられたが、禅師は霊雲院の輪番であったので、拝聴の機会を逸してしまった。そこで偈頌を作り、その講義を想い浮かべるというもの。当時の本庵の輪番の任の重さというものが慮れると同時に、江戸中期の妙心寺山内の様子がうかがえる作品である。無著禅師の偈頌は次の通り。
「舟駕暴流して両涯に移る 君を煩わして玄を辯じて狂華を劈(つんざ)く講経已に竟って禪徒は去る 円覚と妙心は元と我が家」