平成二十七年三月発行
「四年」
東日本大震災から四年の歳月が流れました。全国的にこの場所が報道されることも少なくなり、被災地に生活する我々自身もあの凄惨な光景や苦しい体験から学んだことが薄れつつあるように感じます。
今年も東園寺では震災犠牲者の方々の毎歳忌を行います。志半ばで命を喪った方々に祈りを捧げると同時に、震災記憶の風化を妨げる一助になればと念じます。
未曾有の被害をもたらした大地震という言葉を震災後によく耳にしましたが、歴史上の記録を振り返ると、地震、津波ともに何度もこの地を襲い、甚大な被害が生じている事が知られています。地震とそれに伴う津波だけに着目すれば、今回の規模のそれは決して「未曾有」のことでは無かったのです。しかし、人間は実に忘れやすい生きものなのでしょう。往古の大震災の情報がもっと明確に伝えていたならば、もっとたくさんの命が救われたに違いありません。
かような意味においては、震災体験が深刻な体調不良をもたらしている方は別として、被災地に生きる我々は何らかの形でその体験を後代に伝える責務があるのだと思います。
そして、多くの犠牲者から学んだ命の尊さ、縁の大切さを私達が我が身を以て実践することこそが亡き方の御心を活かすことであります。日々迷いながらより良き道を模索して進みましょう!
東園寺住職 千坂成也 合掌