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法螺貝 住職の法話

平成二十七年九月発行

瑞巌寺開山忌

 本日、九月八日は松島瑞巌寺中興開山雲居希膺禅師のご命日。日本三景の松島と共に全国に名前を知られる瑞巌寺に比べて、江戸時代に伊達家の信任を得て、瑞巌寺の綱紀を正し多くの弟子を育てた雲居禅師の名前は一般的には知られていないかもしれません。
 雲居禅師は土佐一条家の家臣、小浜左京の子息です。禅師の母は主君一条頼房公が病に倒れ、道後温泉で養生されていることを聞き、身重でありながら看病の為に同地に向います。その道すがら急に産気づいて禅師を産みましたが、主君の大事にあって赤子を共に連れて行くわけにはならぬと判断し、道端の毘沙門堂に布に包んだ我が子を棄て置き、道後に馳せ参じたと言われます。さりとて母親として愛情が無い訳がありません。彼女は事のなり行きを姉妹に伝えたようで、雲居禅師は伯(叔)母に救われ育てられたようです。
 雲居禅師はこのような因縁からか、生涯毘沙門天を信仰し、蕃山大梅寺で遷化される際にも毘沙門天が安置される繋船亭にあって、弟子達に別れを告げています。釈迦、達磨何者ぞ!と勢を示して宗門の大事を教示する禅宗にあって、雲居禅師のように自らの信仰を明らかにする方は少ないと言えます。
 戒律を重んじ神仏への素直な信仰を宣揚する雲居禅師の家風はよく当地の気風と馴染み、藩主、重臣はもちろん、広く民衆からの信仰も集めました。雲居禅師が教えられた『往生要歌』は、今でいう御詠歌の先駆的なものであり、昭和の終わり頃までは松島の地で唱え続けられて来ています。


東園寺住職 千坂成也 合掌


 
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