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法螺貝 住職の法話

平成十七年十月発行

『 面壁九年 』

 十月五日は達磨さんのご命日。禅宗では鼻祖忌という法要を営みます。鼻の祖とは不思議なネーミングですが、これは中国では母体で人体が形成される際に、最初に鼻出来上がると考えられており、達磨さんは禅宗の初代の坊さんですので、初めての祖ということで鼻祖と申し上げるのです。もっとも最近は素直に初祖と呼ぶことが多いようですが…。

 達磨さんの実像については様々な意見があり、その存在そのものを否定する説もあるようです。しかし、禅仏教の象徴として禅画の題材となったり、或いは縁起物として張子の人形になったりと、我々日本人にとって達磨さんは非常に身近な存在であります。張子の達磨さんは群馬県高崎の達磨寺の住職であった方が農閑期の農家の内職として渡来僧東皐心越禅師が書いた達磨図をモデルに作成させたものとされます。達磨さんは崇山の洞窟で「面壁九年」の修行をしたと伝えられますが、この面壁という修行、洞窟内ですから当然壁には向かっていたでしょうが、「外に所縁を息め 内心喘ぐことなく 心牆壁の如くにして 以って道に入るべし」(外界の縁を断ち切り、心を動揺させること無く、心を壁の如くして、修行に打ち込みなさい。) という言葉に表される通り、単に壁に向かうということのみならず、心をしっかり落ち着けこれを守る修行であることに他なりません。

 今日、社会を上手に生きぬく為には、人よりも多くの情報を得、それを如何に処理するかが肝要であるといわれます。しかし一方情報に振り回され右往左往している現代人も少なくは無いようです。そう考えると、今の時代であるからこそ、一日に一度は「心を牆壁の如くにして」自分を見つめることが非常に大切であると思います。當山でも毎週日曜日に坐禅会を実施しています。是非一度ご参加下さい。

 
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