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法螺貝 住職の法話

平成十七年十一月発行

『 一えい石 』

 唐の時代のことです。廬山(ろざん)の禅寺で修行僧が作務をしていました。作務とは修行僧が行う日常の労働のことで、禅寺では日常の労働を読経や坐禅に劣らぬ修行と考えます。
さて、話を本題に戻しましょう。雲水達が穀物を石臼でひ※いて居りますとお師匠さんの智常禅師(ちじょうぜんじ)がやって来ました。
「おお!ご苦労さん。今日は何の作務だい?」
「老師。見ての通り臼をひ※いております。」
「そうか。まぁ臼をひ※くのは結構だが、真ん中の棒はひ※いてはならんぞ!」
石臼をひ※くなどということは我々の今日の生活にはあまり縁のあることではありませんが、当然ながらクルクル廻る石臼でも、心棒が動いては具合が良くありません。
一えい※石とは、我々の生活もこの石臼の心棒の如き不動のものが無くてはならないという教えです。人並みに流行に乗り、情報を手に入れそれを商売に活かすにも大切でしょうが、何ものにも動じない一本の芯が無くてはなりません。一えい※石―身近な言葉で言えば「信念」ということです。

※ひく、えい…の文字が入ります(常用漢字表にない漢字のため表記)

 
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