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法螺貝 住職の法話

平成二十八年九月発行

「一日作さざれば一日食らわず」

 中国が唐と呼ばれた時代の禅僧に百丈という方がいます。禅宗の様々な規則を決めた方として知られます。
 ある時、百丈さんに弟子が質問しました。「和尚さん、世の中で一番珍しいことは何でしょう?」
 「それは私がこの大雄山にちょこんと座っていることじゃよ。」
 今のように科学が進んでいない時代でも、夜が明け、風が吹き、雨が降るというような自然の恵みは実に不思議なものであったことでしょう。それでも百丈さんは先ず何が不思議といって、自分自身がこの世に生まれ、成長し、縁を得て僧侶となり、人によっては病に倒れ、戦や事故で命を落とすというのに自分がここに座し、弟子の問いに答えているのが何よりも不思議だというのです。
 百丈さんの晩年、老体に鞭打ち労働をする師匠の身体を心配し、弟子達が畑の道具や掃除用具を隠したことがありました。すると百丈さん、食事を絶ってしまいます。この時、百丈さんがおっしゃった言葉が、「一日作さざれば一日食らわず。」です。
 百丈さんにとって生かされている感謝を表す一つの方法が労働という修行だったのでしょう。
 私達は父母や天然自然の恩恵を受けてこの世に生まれ、やがて死すべき儚い運命にもかかわらず、今ここに生きています。この重大さに気付くことこそが幸せの第一歩なのです。
 そしてさらに縁を得て子宝に恵まれて子育てをさせて頂いている。なんと幸せなことではありませんか!これを日々のエネルギーに変えなくては!(塩釜中央幼稚園『おさなご』より)

 
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