平成三十年一月発行
「無事これ貴人」
皆さんにとって平成二十九年は如何なる年でしたでしょう?現代社会において寺と縁を結ぶということは身内や知人のご不幸によるものが圧倒的ですから、この文章を読む方の多くが「平成二十九年=悲しい年」となるのかもしれません。昨年に限らずここ数年は世界的に自然災害が続き、国内では隣国のミサイル実験に慄き、猟奇的な殺人事件を耳にしては恐れと同時に怒りを感ずるという日々だったような気がします。
そんな現代の世相に接するに表題の「無事これ貴人」という禅語が実に心に染み入るのであります。この言葉は臨済禅師のもので、禅師は「悟りというものを外に求めること無く、ただ日常を無事であれ!」とおっしゃるのですが、人間そう簡単に達観出来るものではありません。ときに理不尽ともいえる災難に遭うのが我々の人生で、本当に「無事が一番」という境涯に達する為には様々な「有事」を経験しこれを乗り越えることが必要です。今年も右往左往して精一杯生きぬきましょう!