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法螺貝 住職の法話

平成三十年九月発行

「拈華微笑(ねんげみしょう)」

 お釈迦様の晩年のことです。霊鷲山に弟子を集めたお釈迦様。マガダ国のこの山とコーサラ国の祇園精舎はお釈迦様が説法をなさる象徴的な場所です。この時も弟子たちはお釈迦様がお話をなさるのを今か今かと待っていました。しかしお釈迦様は梵天という神様から託されたコンパラ華を一輪示すのみで一言も語りませんでした。
 お釈迦様に合わせたかのように沈黙する修行僧の中で一人大迦葉尊者は破顔微笑されます。するとお釈迦様は言いました。
「吾に正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)涅槃妙心(ねはんみょうしん)実相無相(じっそうむそう)微妙(みみょう)の法門あり。不立文字(ふりゅうもんじ)教外別伝(きょうげべつでん)摩訶迦葉(まかかしょう)に付嘱(ふしょく)す。」
 これはお釈迦様の言下に尽くせぬ微妙なる教えが以心伝心にて大迦葉尊者に伝えられたという物語で、特に禅宗で大切にされるものです。禅門で大切にされるお話と申しましたが、このような大切な話を半ば茶化すように取りあげ、その真理を探求するというのが禅門の面白いところ!「お釈迦様も洒落た真似をして、花を示して跡取りを決めたというが、その時、大迦葉だけでは無く、大衆全員が笑ったらどうするのだ?」というコメントをした禅僧がいます。
 さてどうでしょう?修行僧全員が笑ったら…。きっとお釈迦様もさぞかしお喜びになったに違いありません。コンパラ華は大迦葉のみに示されたのではありません。全ての弟子、全ての生きとし生けるもの、時空を超えて私達にも、お釈迦様はコンパラ華を示しておられるのです。
 私達の心が開かれていれば野に咲く花も、仏前の花も、大切なご家族の遺影や位牌も全てコンパラ華!仏陀の教えを示しているのです。

 
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