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法螺貝 住職の法話

平成三十一年二月発行

「お釈迦様の死」

  “もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠らず修行を完成させなさい。”
 これはお釈迦様が最期に臨んでおっしゃられた言葉です。80歳になられたお釈迦様はマガダ国、王舎城の霊鷲山から北に向けて旅を始めます。お釈迦様は毎年この場所と北方の国であるコーサラ国の祇園精舎を往来されていますので、言わば通い慣れた道のりだったと思います。老齢を迎えて体調が優れなかったお釈迦様は弟子達に身体を支えられながらの旅でした。道中、旧来の信者と交流をした様子や、時に「この景色を見るのは最後だろう。」というお言葉なども経典は伝えていますが、人間としてごく当たり前の体調不良やお釈迦様が過去を述懐されるお姿などは、ところどころに挿入される教理的な説法よりもとても魅力を感じるところです。
 お経というものは長い年月を経て完成しています。長い歴史の中で数多くの潤色が加えられたり、その時代時代における価値観に準じたりすることがあるそうで、後代に改編された経典ほどお釈迦様が神格化された描写になるとのこと。そんな中で涅槃経がごく当たり前なお姿でお釈迦様の老化や死を描いているのはとても有難い事ですし、病をおして説法をされるお釈迦様のお姿こそが一切行苦や諸行無常に対し我々が如何に対処すべきかの実例であることを理解せねばなりません。

 
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