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法螺貝 住職の法話

令和元年十月発行

「本当の宝」

 十月五日には達磨忌、禅をインドから中国に伝えたと信じられる達磨大師のご命日です。
 達磨さんは南インド香至国の第三王子として誕生します。達磨さんの父王は大変仏教を信仰しており、よく城内に僧侶を招いて聞法していました。ある時、後に達磨さんの師匠となる般若多羅さんという僧侶の法話に感動した父王は般若多羅さんに大きくて美しい玉を布施しました。すると般若多羅さんは三人の王子に向かって、玉を示しつつ問いました。
 「この玉に勝る宝がこの世にあったならば言ってみなさい。」
 達磨さんの兄二人は口々にその玉の素晴らしさを称え、これに勝る宝など思いつかないと答えます。これに対し達磨さんは言います。「和尚さん、それは確かに素晴らしい宝だとは思いますが、傷がつけば価値が下がり、綺麗に光ってはいますが、その光は太陽や灯の明るさを映しているのであり、自ら光っているのではありません。私はそのような物質的な宝よりも、自ら光り輝く仏の智慧や慈悲の方が素晴らしいと思います。」
 般若多羅さんはこれを聞いて幼い第三王子に優れた機根を感じ、父王が亡くなった後、達磨さんを得度させ立派な僧侶に育てました。 多くの大乗仏教の宗派が、この自ら光り輝く仏の智慧は本来私達の心に備わっていると説いています。しかしながら私達はなかなかその素晴らしい仏の智慧に気付くことが出来ません。頭で理解しても、本当の仏の智慧に気づく為には相当の精進が必要なのです。

 
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