令和三年三月発行
「忘れない…。いや忘れられるだろうか。」
あの東日本大地震から十年の月日が経とうとしています。この時期になると津波の映像がテレビで盛んに映し出されます。震災を風化させないというメディアの善意とは思いたいのですが、見かけによらず繊細なところもある小衲は津波の映像を見ると、動悸がしたりするものですから、なるべくテレビを見ないようにしています。あの地震に遭遇して長時間の大きな揺れを感じた方や、津波の惨状に接した方の中には同じ症状に陥ることがあるのでは無いでしょうか?
「忘れてはいけない!」と声高に唱えるコメンテーター…。でも当事者は忘れたくとも忘れられませんよね。今回の震災ほど映像が記録されている災害が無いと言われます。それらの映像は将来、地震による津波の恐ろしさを後代に伝え、多くの人々の命を救ってくれるに違いありません。
でも既に心に深く震災の様子が刻まれている方は、少しテレビや震災の回顧から離れましょう。自ら苦しい想いをする必要はありません。自分自身の静かな心が多くの犠牲者への大切な供養です。
改めて東日本大地震で亡くなられた多くの方々の御霊の安からんことを祈ります。
「南無本師釈迦牟尼仏」
東園寺住職 成也合掌