令和三年九月発行
「勝ち負けを棄てて」
勝つ者
怨みを招かん
他(ひと)に敗れたる者
くるしみて臥(ふ)す
されど
勝敗の二つを棄てて
こころ寂静(しづか)なる人は
起居(おきふし)ともに
さいわいなり 法句経二〇一
世の中を生きていれば好むと好まざるに関わらず、物質的なものだけでは無く、心中にも勝ち負けが生じるものです。時には一所懸命に物事に取り組めば取り組んだほど、事が上手く運ばなかった時には大きな挫折感を味わうことになるかもしれません。
大きな挫折感は人によっては一生の重荷になることもあるかと思います。大昔の日本や中国には自然風物を愛す世捨て人が優れた詩文を遺したりしていますが、近年は斯様な自由人は存在するのでしょうか?冒頭の詩はお釈迦様の肉声を感じることが出来る『法句経』の一節です。なかなかこのような境涯にはなれるものではありませんが、苦しい時にはこんな言葉を思い出し、何が本来の幸福なのかを見つめ直すことが大切です。