令和四年一月発行
「遷化(せんげ)、津送(しんそう)」
寒中お見舞い申し上げます。昨年秋頃から新型コロナウイルス感染の勢いが衰え、イベントや行事なども徐々に再開されて来たところですが、昨今はオミクロン株の急激な拡大により、また社会が滞るような雰囲気になっております。但し、オミクロン株に関しては重篤化しないようですので、私達は過剰にこれを恐れることなく、静に真実を観察する必要があるかと思います。
さて、私事ですが昨年は修行時代から大変お世話になった先輩方が遷化され、諸行無常を感じると共に人生という与えられた時間の如何に短いかを実感させられました。
日本時間の12月30日、私にとってはまさに盟友と言っていいハワイ開教院の山口良三和尚が遷化されました。山口和尚は縁あって東園寺先住精道和尚の弟子となり、同寺の兼務住職であった精道和尚の後を継いでハワイ開教院住職となり30年以上にわたり同地の住職として布教活動に尽力された方です。また先住遷化に伴い27歳で住職になってしまった小衲にとっては常に叱咤激励してくださる精神的支柱とも言える方でした。
精道和尚と山口和尚、小衲と山口和尚が協力して実施したハワイの高校生と日本の高校生の交流プログラムは、多くの若い世代の交流を生み、互いに日本の文化が再認識する機会となった有益なものであったと自負しています。また海外から見た日本の仏教の現状を嘆く山口和尚と過ごすハワイは小衲にとっては何よりの学びの場!本当ですよ!
僧侶の死は遷化と言います。教化の場所を遷すという意味です。そして禅宗の葬儀は津送と呼びます。教化の場所を遷す僧侶を見送るから葬いではなく、「送」を用います。送ったと言っても山口和尚の叱咤激励は未だに我が耳にあり、先住精道和尚の熱喝と共に小衲を働かせることでしょう。親しい人を送る度に生きている不思議を感じます。
帰国者隔離のホテルにて 成也拝