令和五年一月発行
「無事是れ貴人(きにん)」
新しい年となりました。禅宗寺院、特に瑞巌寺のような大寺では、正月三ヶ日は毎朝大般若祈祷を行い天皇陛下のご健康と国の平和と国民の幸福を祈ります。
昨年はロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮によるミサイル実験など平和を脅かす事柄が多かっただけに祈るだけでどうなるものかと思いますが、こんな時にこそ様々な計らいを捨てて、愚直に祈るということが大切なのだと感じます。
さて正月三ヶ日の祈祷が終わると次の行事は一月十日の臨済忌。この日は中国唐代の禅僧で我々臨済宗の宗祖である臨済慧照禅師のご命日となります。冒頭の「無事是れ貴人」は臨済禅師の代表的な言葉。「無事是れ貴人、ただ造作(ぞうさ)することなかれ。ただ平常なれ」というような言い回しもあります。これは「なにごともしない人こそが高貴の人だ。絶対に計らいをしてはならぬ。ただあるがままであればよい。」という意味。これは簡単なようでとても難しいですね。取り組んでいることが大切であればあるほど、私たちは何もせずにはいられません。当然、右往左往します。しかし身体は右往左往しても肚は据わっていなければ、大切な判断を見誤ることになってしまいます。
私達は日々忙しく生活していると本来の幸福や目的を見失い、枝葉のことで大きく悩んでしまうことが多々あります。そんな時は姿勢を正し、ふーっと息を吐いて心を調えましょう!少しは楽になると思いますよ。
この文章を読んだ方々の一年が実り多きものとなりますように深甚より祈念申し上げます。