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法螺貝 住職の法話

令和五年三月発行

「和顔愛語(わげんあいご)」

 お釈迦様の高弟アヌルッダ長老は、目が不自由でした。長老は釈迦族の出身でお釈迦様に憧れ出家した人です。ある時、アヌルッダ長老はお釈迦様の説法で居眠りをしてしまいました。お釈迦様はせっかく出家したにも拘らず、そのような態度で修行に臨んだアヌルッダ長老を叱ります。長老はこれを深く反省したのは良いのですが、不眠の行に取り組み、ついに視力を失ってしまいました。肉体的な視力を失った時に心の眼(まなこ)が開け、天眼(てんげん)第一と称されるような力を得たアヌルッダ長老ですが、やはり普段の生活では目が不自由な事に苦労されたようで、繕いものをする際、針に糸を通す作業などはいつも他の修行僧にお願いするしかありませんでした。
「どなたか目の不自由な私の為に功徳を積む方はおられませんか?私の為に針に糸を通してくださらんか!」
アヌルッダ長老がこう呼びかけると、慈悲深い声で応じる修行者がおりました。
「どうか、その功徳を私に積ませてください。」
その声に長老は驚きます。その声は他ならぬお釈迦様でした。
「お釈迦様、あなたは修行が行き届いており、これ以上、功徳を積む必要の無い方です。私などの為にもったいない!」
「いいえ、私も常に向上の為に勤めるべきものです。どうか私に手伝わせてください。」
 和やかな表情と穏やかな言葉で人に接するのが和顔愛語の教えです。それは表面的なものでは無く、心から出たものであるべきです。相手の事を深く考えての行いこそが本当の和顔愛語!そう考えると長老に対する叱責も実は和顔愛語と言えるのかもしれません。もっとも褒めて伸びるタイプばかりの今日では通用しないかな?

 
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