令和六年五月発行
「善月」
五月は大回向(おえこう)の月。大回向は飢饉による犠牲者の供養と飢民の救済を目的に仙台藩内で生まれたもので、本来は大回向寺と呼ばれる仙台の三ヶ寺が交代で年に一度、五月に法要を営んだものです。三ヶ寺を回る為には都合三年という年月を要しますが、三ヶ寺すべてをお参りすると功徳がとても大きくなるので「大回向」というのだとか…。
これが塩竈周辺まで大回向が拡大したのはそう古いことではなく、東園寺の行事として定着したのは第二次世界大戦後のことです。また東園寺では大般若祈祷が行われていますが、こちらは先住職精道和尚が始めたもので、もともと五月は正月や九月と共に善月と呼ばれ、善月祈祷といって大般若会(だいはんにゃえ)を致しますので、この時期に同法会(ほうえ)を営むのは禅宗の伝統とも合致しています。
それでは善月って何でしょう?善月とは三長斎月(さんちょうさいがつ)とも呼ばれ、在家の信者が特にしっかり戒を守り、身をつつしむべき月とされます。一月、五月、九月は閻魔様所有の「浄玻璃の鏡」に我々の世界の様子が普段よりも克明に映し出される月であると共に、四天王が我々の住む世界を巡回するので、行を正しましょう!ということ。
実は善月の一月、五月、九月は別名「凶月」。善い月どころか、悪いことが起こりやすいので、祝月や善月と称して、普段よりも慎重に過ごすべきという教え方があったようです。現実的に考えてみると一月は万物が生じ、五月は万物が成長し、九月は万物が実りを迎えるという季節の節目であると共に、私たちの身体の調子が崩れやすい時節でもあります。