令和七年三月発行
「売家と唐様で書く三代目」
多くの学校や会社は四月に新年度を迎えます。東園寺は幼稚園を運営していますから年長児の卒園式にまた学年末の諸準備で年間を通じてもこの時期はなかなか忙しい時期だと言えます。
年度末になると今年度はこれが出来なかったなとか、来年度はここに力を入れなければと思案しますが、住職に就任して三十年以上も経った自分はなかなか抜本的な変換が出来ていません。年齢的にはまだ還暦前ですから住職として老僧と呼ばれるのはまだ先のことですが、住職になるのが早過ぎましたね!
話しは変わりますが、東園寺は一般で言う世襲になったのは二代前の祖父から。三代目が事業や家業のキーマンになるとは昔から喧伝されるところです。徳川家が幕府を約二六五年も維持出来たのは三代目家光公の功績が大きいと言われますが、一般に三代目は家業をダメにしてしまうパターンが少なく無いようです。三代目の私は責任を感じます!
「売家(うりいえ)と唐様(からよう)で書く三代目」という言葉があります。初代が苦労して築いた財産や家を、三代目が遊芸に耽り商売を疎かにした為に売却してしまうという意味。遊びや手習だけは達者な三代目が、唐様の洒落た字で「売家」と書くという喩えはなかなか面白みがあります。
しかし三代目を代表して弁明させてください。創業者から三代目まで五十年程度の時間があるとすれば、世の移り変わりや人々の嗜好の変化で、三代目が真面目に仕事をしていても事業が立ち行かなくなることも往々にしてあるワケでして…。三代目も人それぞれだと声を大にして申し上げたい!
さて当地では大震災以降、日本や世界規模で見るとコロナ禍以降、社会の変革のスピードが恐ろしいほど速やかに感じられます。こんな時であればこそ三代目だけでは無く、それぞれの人が自分自身の人生にとって何が一番大切なことなのかをしっかり見極め、慎重に行動すべきだと感じます。また使い古された言葉ではありますが、ピンチはチャンス!「窮(きゅう)して変じ、変じて通ず」です。日々を大切に過ごしましょう!