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法螺貝 住職の法話

平成十九年八月発行

『お盆』

パソコン、着メロ、ファミレス、地デジ。日本人は略語が好きなようで、私たちの身の回りには本来の名称よりも耳慣れた略語が少なくありません。もはや死語とも言える「銀ブラ」という言葉があります。「銀座をブラつくこと。」を意味するものとして使用されることが多いようですが、元々は「銀座で飲むブラックコーヒー」が本義だそうで、略語が思いもよらぬ形で普及された例であるとされます。

 実は、お盆もこの「銀ブラ」のように本来の意味を離れて流布したところがあります。お盆というと食べ物を運ぶための道具とイメージされる向きもあるようですが、元来はサンスクリット語のウランバナを音写した「盂蘭盆」の略語で「倒懸の苦しみ」(逆さに吊るされたような苦しみ)という意味です。インドには佛教以前より子孫が続かない家の先祖は逆さ吊りの苦しみに遭うという考え方があり、ウランバナはまさしくこの先祖の苦しみを表した言葉です。ヒンズー教では修行生活に入る前に学業を修め、さらには家業に従事し家庭を営むことが理想とされますが、前述のような信仰に基づくものであると思われます。

 さてお盆という言葉が独り歩きしたのは、中国からでウランバナの当て字に「盆」という文字を使った為に、お供物を盛り餓鬼幽霊に施与する器という意味に誤解されことに始まります。本邦の盂蘭盆会の布教の背景となった佛説盂蘭盆経等にも「七月十五日佛歓喜の日、僧自恣の日に於いて百味の飲食を以って盂蘭盆の中に安じ、十方自恣の僧に施し~」とあるように盂蘭盆という言葉が供物を盛る器として用いられています。もっとも中国には「お盆=器」説を肯定する僧侶もおり、宗密という方は「盂蘭は西域の言葉で倒懸の意味、盆は中国の言葉で『救う器』という意味である。」と述べ、お盆=供物を盛る器を認めています。

 何れにしてもお盆は日本佛教最大の行事であります。佛陀や先祖を敬うと同時に先祖や自然等様々な縁により賜っている自らの命に感謝し、心穏やかに過したいものです。

 
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