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法螺貝 住職の法話

平成十九年十月発行

『坐禅』

坐禅という言葉を知らない人はあまりいないでしょう。最近流行の『おしりかじり虫』ですら滝に打たれて坐禅をしているくらいですから、坐禅という言葉自体は非常に世に知られたものであり、もっとも修行らしい修行と言えるのかもしれません。ところが真に坐禅を体験した方と言えば、あまり多くはありません。また、坐禅は厳しい修行というイメージが先行しすぎており、正当な評価を受けているとは言い難い状況にあります。これは一つには僧侶によってなされる坐禅指導が修行道場のきまりに固執しすぎており、初心者向けの指導がなされていないという点が大きいと思うのですが・・・。
坐禅というものは適正な姿勢や時間で行われるならば、実に気持ちの良いものであります。

 達磨(だるま)大師(だいし)から数えて六代目の祖師にあたる慧能(えのう)禅師(ぜんじ)は、坐とは外界に対し心が動かないことをいい、禅とは自分の本心を見とどけ心が安定することをいうと説明していますが、こんな堅苦しい説明を待たずとも、薄暗い禅堂の中、生活音から開放され、自分の呼吸を感じ、心身の緊張が和らいでゆく感覚は何ともいえないものであります。修行道場での坐禅は公案と呼ばれる禅問答に取り組むと共に、警(けい)策(さく)とよばれる慈悲深い棒が打たれる音を耳に坐りますので、鬼気迫る様相を呈するものですが、私自身は一般的な坐禅会はもっと気軽なもので良いと思っています。當山の坐禅会も修行というよりも健康法的な感覚で実施しています。

 現代人は様々なストレスを抱えています。生きている以上、苦楽の境を入ったり来たりするのが世の常ではありますが、身体を内面から調える坐禅や誦経(お経を読むこと)は、実に伝統的で効果的な癒しの方法であると思います。

 
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