平成十九年十一月発行
『 八大佛蹟』
八大佛蹟とはお釈迦様の人生、或いは宗教活動の中で特に重要な出来事のあった八つの場所を呼んだもので、有名なアショカ王が制定したのだとも言われています。釈迦八相というお釈迦様人生の八つの大切な節目をあげたものがありますが、これは下天、託胎、誕生、出家、降魔、成道、転法輪、涅槃の八つであり、八大佛蹟とすべて重なるもではありません。
八大佛蹟の八つの場所の名前と出来事を挙げると次の通りです。誕生の地ルンビニー、成道の地ブダガヤ、初転法輪の地鹿野苑、※猴献蜜の地ヴァイシャリー、仏教最初の寺である竹林精舎が建てられ、最初の大檀那であるビンビサーラ王が統治したマガダの首都王舎城、日本でも名の知られる祇園精舎が建立された舎衛国、トウリ天から降下した地であると信じられるサンカーシャ、そして入滅の地クシナガル。佛蹟の多くは基檀などが残るのみの遺蹟ですが、それでもお釈迦様が実際に活動された場所を自分の脚で歩くということは感慨深いものがあります。なかには「何だ!煉瓦の山ばかりか!」という方もいますが…
インドを歩いていると、実際にお釈迦様の足跡と自分の足が直に結ばれるような気がしますし、事実、佛蹟を巡拝すれば、生涯素足で旅を続けられたお釈迦様の足跡と自分の足が何度も重なることになるのです。このことは我々仏教徒にとって何より大きな喜びであります。
IT産業の成功でインドは大きな繁栄期を迎えています。しかし佛蹟が点在するインド内陸部のビハール州やUP州は、さしてその恩恵を受けることも無く、良くも悪くも往古の姿を留めています。その広大ではあるけれどもやせた大地や、絶望的な貧困を耐える人々に接するとき、お釈迦様がこの世を娑婆世界(苦悩を耐え忍ばねばならない世界)と呼びつつも、抜苦与楽の行を尽くされたお姿に見える思いがするのです。
というわけで十二月にまたインドに行ってきます。
住職記
※の文字が入ります(常用漢字表にない漢字のため表記)