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法螺貝 住職の法話

平成二十年四月発行

『四月八日は降誕会』

四月八日は降誕会―お釈迦様の誕生日です。経典によれば、お釈迦様の父母であるスットダーナ王とマーヤ夫人はなかなか子宝に恵まれずにいましたが、あるときマーヤ夫人が六本牙の白象が胎内に入る夢をご覧になり、これを占い師に話したところ、懐妊の証であるとの見立てを受けたのです。十ヶ月後出産の為に故郷である隣国コーリヤ国の首都デーヴァダハに向かう道すがらのルンビニーの園で花盛りの無憂樹を一枝採ろうとしたときにゴータマ・シッダルタ王子―後のお釈迦様は誕生されました。誕生されたゴータマ王子は東西南北上下それぞれの方向に七歩歩まれ「天上天下唯我独尊」と仰ったのだそうです。「天上天下唯我独尊」という言葉は「これが最後の誕生であり、今後は輪廻転生することがない。」というのが元来の意味ですが、日本では様々に意味が深められ、今日では「すべての生命の尊重」と解釈されたりしています。 上記のお釈迦様の誕生の話は仏教の開祖であるお釈迦様を讃美する為の脚色に満ちたもので、史実とはかけ離れたものであることは、衆目の一致するところですが、マーヤ夫人の心情を察するとき、待ちわびた我が子の元気な姿と産声が特別に感じられたのは当然のことでありますし、それを大げさに表現すると「七歩歩む~」「天上天下唯我独尊」まで行き着くのであるとも理解できます。これは男では体験し得ないことですが、出産の苦しみと喜びを体験された母親ならば、マーヤ夫人の歓喜に共感できる方も多いのではないでしょうか。悲しいことにマーヤ夫人は出産の後、一週間でこの世を去ってしまいます。ここからゴータマ王子の苦悩に満ちた青少年期が始まり、やがて悟りの道へと歩まれるのです。

(追記)
現在のルンビニーは発掘調査も終わり、きれいに整備されると共に、遺跡を風雨から保護するお堂が建立されています。お堂の中ではお釈迦様が誕生された場所を示している石をお参りすることが出来ます。その石から見上げる壁面には以前のマーヤ堂にあったゴータマ王子とマーヤ夫人の石像が安置されています。このお堂の背面にはアショカ王柱が聳えています。玄奘三蔵は落雷により柱が折れたことと馬の装飾を頂に載せていたことを伝えています。現在も落雷による破損の痕を確認出来るのですが、七世紀の玄奘三蔵が目にしたものに、間近に接する感動は筆舌に尽くしがたいものがあります。



人が沢山集っているところの直ぐ下が
お釈迦様誕生の場所である

 
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