平成二十二年二月発行
『涅槃会』
2月15日は涅槃会。日本の仏教ではお釈迦様のご命日であると信じられています。すべての生命が眠るかのような極寒の2月は、お釈迦様の涅槃にふさわしい季節とも感じられます。しかし、旧暦の2月15日は現在の3月末ですから、京の都などでは花に囲まれた季節であったと思われます。一部の由緒寺院では2月15日までの一週間、涅槃図を掲げ、お釈迦様の遺言とも言える遺教経を読誦し、お釈迦様の遺徳を偲ぶお勤めをするそうです。東園寺の涅槃図は江戸後期の伊達藩を代表する絵師で塩釜出身の小池曲江さんが文政4年(1821)64歳のときに、佐浦家の依頼により描き、塩釜神社の別当法蓮寺に奉納されたものです。当山に所蔵が遷ったのは明治の廃仏毀釈により、同寺が廃寺になったことに因ります。小池曲江さんは90歳の長寿を全うされた方で、当山所蔵の涅槃図は壮年期の傑作と言えるものだそうです。
お釈迦様の涅槃と言えば沙羅双樹を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、涅槃図をご覧頂くと、沙羅の樹と覚えし樹木が八本ありますね。双樹というからには二本の樹を想像するのですが、北伝の涅槃経では東西南北に沙羅双樹があったとされ、都合八本の沙羅の樹があったということになっています。この八本の内、四本が枯れ、残りの四本の樹には葉が茂っているのは四枯四栄と言って、四本の枯れ樹でお釈迦様の肉体には限りが有ることを意味し、緑の茂る樹はお釈迦様の肉体は朽ちても、その教えは後の世まで栄えるという事を表しています。