平成二十三年一月発行
1月10日は臨済忌
1月10日は臨済忌。臨済宗の宗祖臨済義玄禅師(諡号は慧照)のご命日とされる日です。臨済禅師が黄檗禅師の下で修行していた頃のこと…。
(黄檗)「こんな山奥の寺に松など植えてどうする気だ?」
臨済禅師は松の苗を境内に植えていたようです。
(臨済)「松を植えることによって、1つには境内の景観を整え、1つには後の修行者の道しるべに致します。」
境内を清掃し美観を整えるのは修行の基礎だと申します。先般、ある和尚さんが「わしはしゃべるのが苦手だから、庭の掃除をしっかりやって参拝の方々に清々しい気持ちで帰ってもらうのだ。」とおっしゃっておられました。まさに綺麗に清掃された境内は無言の説法であります。もっとも、この和尚さん、お話もとても上手なのですが…。
東園寺にも沢山の樹木があります。本堂前の庭園は平成になってから造られたものですが、1度、山頂墓地に向かうと何時誰が植えたのかも知れない大木が文字通り林立しています。昨年、新訳が発行された江戸時代中期に記された奥塩地名集には塩釜の銘木として、東園寺開山大林宗茂禅師お手植えの茅の木が紹介されています。大林禅師は瑞巌寺27世で、生没年は不明ですが少なくとも西暦1400年以前の方であることは確かであり、この銘木が残っていれば樹齢600年を超える大木となっていたことでしょう。現在も境内にはたくさんの茅が残っていますが、きっとこの開山様お手植えの茅の木の子孫であるに違いありません。
現在は参拝者の評判の芳しく無い茅の実も以前は薬として用いられ、油分の多い枝は焚きものとして重宝したと思われます。現在でも落葉樹が寂しくなる厳冬期、常緑の茅は雄々しく参拝者を励ましてくれるようです。(と私は思います。)まさに当山の茅は寺の風景を整え、後人のみちしるべとなっているのです。
私達の身の回りには、天然自然の恵みはもちろん、誰かが後の人の為にと、苦心されたものに溢れています。先人の業績に感謝するとともに、私達も後の世に何がしかの影響を与える「今」を生きていることに責任を感じます。