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法螺貝 住職の法話

平成二十三年六月発行

『東西南北活路通ず』

方角や縁起を担ぐ方は少なくありません。寺院の伽藍も、本堂は南向きに、トイレは東か西になど、古くから伝わる配置があります。もっとも、これは縁起を担ぐというよりは、本尊様になるべく一日中日が当たりますようにとか、トイレには風が入り、やはり一日数時間は確実に日光で消毒が出来ますようにという合理的な考えに基づくものであります。

 特に日本の仏教は草木国土悉皆成仏という教えが多くの宗派の根幹になっていますから、すべての方角が仏の居場所であり、元来は吉凶を越えた存在である筈なのですが、同時に仏教は他の文化と融合するのが得意ですので、中には方角を占うような寺院もあるようです。

 大智度論という書物には方角に関する興味深い記述があります。インド仏教では宇宙の中心に須弥山という大きな山があり、その東西南北に島があり、その中の南の島がインドであると考えています。太陽は、この須弥山の周囲を回っており、それぞれ四島に昼夜が訪れると言います。



 図のように、太陽が須弥山の周りを回りますので、北の国のお昼は、東の国の夜明けとなり、東の国の日中は、南の国の夜明けとなります。また、南の国の北は北の国の南となり、西の国の東は東の国の西となります。文章で書くと複雑になりますが、図をご覧頂ければ、各島と須弥山の位置関係がご理解頂けると思います。ということで何を申したいかというと、仏教ではあまり方角を気にしないという事です。心がしっかりすれば、東西南北すべて活路通じます。


 
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