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法螺貝 住職の法話

平成二十五年四月発行

天上天下唯我独尊

お釈迦様の母マーヤ妃は胎内に子を宿して十ヶ月目、とても気分が良くお釈迦様の故国カピラヴァストゥ郊外にあるルンビニ―園にお出掛けになられました。春の輝きに満ちたルンビニ―の園で、妃は樹から樹へと足を運び、花盛りの無憂樹に右手を伸ばしたときにお釈迦様は妃の右脇から誕生されたのです。誕生された赤子は獅子の如く四方を眺め、それぞれの方角に七歩歩まれて、「天上天下唯我独尊」とおっしゃいます。そのとき、天上と大地には琴の音が自然に鳴り響き、青天にもかかわらず雷鳴が轟き、雨が降りそそぎ、白檀のような香のそよ風が吹いて、生物は喜びに満たされ、人々の心から卑しい思いはすべて去り、地獄の民でさえも一瞬はその苦しみから解放されました。お釈迦様の父シュットダーナ王は赤子にシッダルタと名付けました。これは「自分の念願を実現してくれる人」という意味です。
 さて、お釈迦様の誕生の様子を経典から書き出してみました。仏教という深遠な教えを開かれた開祖である偉大なお釈迦様の伝記ですので、神格化された表現になっています。しかし、注意深くこれを観察するならば、一人の人間の誕生に際しての親の喜びというものが感じられると思います。十月十日の間、胎内にあって共に過ごした我が子が無事誕生した瞬間の感動、生命力に満ち溢れる産声、元気に動く手足、これを宗教的に表現すると「天上天下云々」となるのでしょう。そして、父王が命名したシッダルタというお名前、我が子の将来を手放しで喜ぶ姿が目に浮かぶではありませんか!生命万歳!人間万歳!天上天下唯我独尊!我々もかくの如く誕生したのか!?

 
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