平成二十五年六月発行
「飢えて食べ、困じて眠る」
「仏法は用功の処なし。ただ是れ平常無事。屎送尿、着衣喫飯、困じ来たらば即ち臥す。愚者は我を笑う。智者は乃ちこれを知る。」
仏法には計らいを加えるところは無い。仏法の究極は日常を無事に生きることである。
トイレに行ったり、暑さ寒さに応じて服を着替えたり、お腹が空いたら食事をし、眠くなったら眠れば良いのだ。愚か者はこれを見てバカにするかもしれない。しかし、本当の智慧者はよく理解してくれるだろう。
当たり前のように生活する日々、これを感謝出来る心を持つことは、実に人間としての一番の幸せであります。社会的に成功を成し遂げても、自ら此処に生きることを不思議であると知ることがなければ、世の珍宝を得ても本当の喜びを知らぬ者であります。
震災の後、私達は多くの犠牲者の方々から命の尊さを学びました。冷え切った身体を温めた炊き出しの食物に、食べる事の本当の喜びを教えてもらいました。しかし、私達の多くが、それを忘れ掛けているような気がします。