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法螺貝 住職の法話

平成十六年十月 発行

『 達磨さん 』

十月五日は達磨さんのご命日。禅宗では鼻祖忌という法要を営みます。鼻の祖とは変わったネーミングですが、中国では母胎で人体が形成される際に、最初に鼻が出来上がると信じられており、達磨さんは禅宗の初代のお坊さんですので、初めての祖ということで鼻祖と申し上げるのです。もっとも最近は素直に初祖と呼ぶことが多いようですが。

さて達磨さん言えば、起き上がり小法師の張子のお姿をイメージします。この達磨さんは縁起物として、禅宗寺院に限らず真言宗などの祈祷寺や、神社等でも授与されていますから、すでに禅宗という宗派や、歴史上の菩提達磨円覚大師から離れて一人歩きしている感があります。

この一般に良く知られる達磨さんは、天明の飢饉の頃、高崎の達磨寺の住職をしていた東嶽和尚が農民の副収入になるようにと、達磨寺開山の心越和尚が描いた一筆達磨をモデルに製作を奨めたのが始まりであると考えられています。初期の達磨は人間が坐している姿に近い安定したものでしたが、現在のような形になったのは養蚕農家が蚕の起き(繭の成長)が良くなるようにと、七転び八起きの達磨さんにあやかるべく、繭の形にしたのだそうです。中仙道の宿であった高崎という地の利もあって、起き上がり小法師は全国へと普及したのです。

この張子の達磨さん禅宗の初祖という立場を超えて多くの人々に愛されているものですが、赤の袈裟を身にまとい、両目を見開き、口を真一文字に結んだ姿は、インドから遥々中国へとやってきた禅宗の初祖の精神力を見事に表現しているのではないでしょうか?

平成十六年八月 発行

『 三宝 』

皆さんの宝物は何でしょうか?命ですか?家族ですか?それとも現実的に家、土地、現金でしょうか?仏教には三つの宝があります。それは仏、法、僧の三つで、仏とは悟りを開き私たち迷えるものを導いてくださるお釈迦様、法とは教えが指し示すところの真理、そして僧とは坊さんのことですが、今日的には、教えに集う仲間たちというほどの意味に考えて頂ければよいでしょう。

この三宝を信じ敬うことが仏教徒の大切な勤めとして古来より説かれるのですが、さてどうでしょう。この世に仏は存在するのでしょうか?実際のお釈迦様は二千五〇〇年も前に亡くなっています。三宝に帰依したくとも宝の一つである仏様がいないのでは、どうしようもありません。いや!寺に仏像のお釈迦様が居るじゃないか!そんな声が聞こえてきそうです。確かにそうですね。お寺の本堂にはお釈迦様が居られます。しかし、仏像である本堂のお釈迦様が、私たちのことを心配してくれたり、慰めてくれたりするでしょうか?これが実によく心配してくれるのです。実によく慰めてくれるのです。

銅や木で出来た人形に過ぎない仏像を拝んで私たちの心が和んだり、落ち着いたりするのは、私たちの心に元来仏様に通じる心があるからです。つまり仏法僧の三宝とは、我々の心に他ならないのです。

 
東園寺 所蔵書画

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東園寺 中興開山

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